ホスト業界の『掃除組』とは

ホスト業界の『掃除組』とは ホスト業界について

ホスト業界には「掃除組」と呼ばれる役割があります。言葉の響きだけを聞くと「下積み」「雑用」というマイナスイメージを持つかもしれませんが、実は多くの売れっ子ホストや有名ホストたちが通ってきた「売れるための基礎」を学ぶ重要な期間でもあります。

なぜ、あえてホストが掃除をするのか?そこには、ただ綺麗にするだけではない、接客業のプロとしての深い意味が隠されているのです。

ホスト業界の「掃除組」って何??

「掃除組」とは、主に新人期間のホストや、まだ売上が少ないホストが担当する、開店準備や清掃を行うチームのことです。「掃除組」に入る売上額の線引きはお店によって異なりますが、歌舞伎町だと売上額30~50万円以下が相場です。

「掃除組」の仕事内容

ホスト業界の『掃除組』とは

「掃除組」の仕事はその名の通り、掃除です。お客様が心地よく過ごせるように店内をキレイに保つ役割を担っています。お店によっては開店前の飲料在庫管理や発注、店内の見栄えをスマートに見せる備品の配置整備も「掃除組」が行っています。

営業中は他のホスト同じで接客の仕事を行います。但し、前述のように「掃除組」は売上が少ないホスト達なので接客補助であるヘルプを行うことが多いです。

グラス・灰皿の洗浄と磨き上げ

ホストクラブでは高級なクリスタルグラスを使用することも多く、ピカピカと輝くグラスをお客様に提供することが重要です。営業で使用した大量のグラスや灰皿を洗い、専用のクロスで一つひとつ拭き上げます。

「水垢(水滴の跡)」と「指紋」は絶対NGです。数万円、数十万円のシャンパンを注ぐグラスが曇っていては、一瞬でお客様のテンションが下がってしまいます。リップ(口紅)の跡が残っていないか、照明にかざして厳重にチェックします。

グラスの汚れに気づけるようになると、女性のネイルの変化や、小さなアクセサリーの変化にも敏感に気づけるようになります。これが「褒め上手」なホストになる第一歩です。

トイレ・パウダールームの清掃

トイレはお客様が唯一「一人になれる場所」であり、お店の評価が最も厳しく下される場所でもあります。便器や床の清掃だけでなく、鏡の磨き上げ、綿棒や油取り紙などアメニティの補充を行います。

「水滴一滴」も残さないのが鉄則です。洗面台周りが濡れていると、お客様の服の袖を汚す可能性があります。匂いのチェックも重要。芳香剤の残量管理も徹底します。

「次に入る人がどう感じるか」を念入りに想像する作業です。これを繰り返すことで、接客中も「今、お客様は何をしてほしいか」を先回りして察する想像力が養われます。

フロア清掃とテーブルセッティング

お客様が最初に目にする「お店の顔」を作ります。床の掃除機がけ、モップがけ。テーブルの配置を整え、メニュー表やボトルを美しくセットします。

ソファの隙間のゴミや、テーブルの脚元のホコリは見落としがちですが、お客様の視線からはよく見えます。テーブルがガタつかないか、クロスの向きが揃っているかもチェックします。

「お客様の目線(座った時の高さ)」で最終確認すること。これは、接客時に上から目線にならず、女性と同じ目線で会話する姿勢とリンクします。

バックヤード管理・備品補充

営業をスムーズに回すための心臓部です。お酒(ボトル・缶)の在庫確認と冷蔵庫への補充。氷(アイス)の準備、おしぼりの発注管理など。

営業中の「お酒がない!」「氷が足りない!」は、売上の機会損失(チャンスロス)に直結します。

「今日は週末だからこれくらい出るだろう」という予測能力が身につきます。また、裏方の苦労を知ることで、将来自分が売れっ子になりヘルプがついた時に、感謝を持って指示を出せるようになります。

これらは一見地味な作業に見えますが、お客様を夢のような「非日常」へ招くための舞台作りです。

ゴミ一つ落ちていない美しい空間があって初めて、高級な接客が成立します。ポジティブに考えれば掃除組は、お店のクオリティを底から支える「縁の下の力持ち」だと言えます。

掃除で養われる「圧倒的な気づく力」

業界で活躍する先輩ホストの多くは、この掃除期間を「接客スキルのトレーニング」と捉えています。

小さな汚れに気づく=お客様の小さな変化に気づく

グラスの指紋や床の小さな汚れに気づけない人は、お客様の髪型の変化や、ふとした表情の陰りにも気づくことができません。

準備の段取り=会話の構成力

限られた時間で効率よくこれらをこなす段取り力は、接客中の会話の運びや、ヘルプについた際の気配りにも直結します。

「掃除組」の経験がハングリー精神とチームワークを育む

掃除組を経験することには、メンタル面でのメリットもあります。

ハングリー精神に火をつける

「早くここを卒業して、もっと接客に集中したい!」という強い思いは、売上を上げるための強力な動機になります。現在のトッププレイヤーたちも、「あの時の悔しさや焦りがあったから、必死になれた」と振り返ることが少なくありません。

同期との絆が生まれる

営業前後の時間を共にすることで、新人同士や先輩とのコミュニケーションが生まれます。苦楽を共にすることで生まれる絆は、その後のホスト人生において助け合う大切な仲間意識へと変わります。

ただし、必要以上に仲良くしたりなれ合うのは禁物です。競い合っていない「ゆるい環境」は居心地が良いかもしれませんが「掃除組」は売上が少ないホストの集まりです。見習うべきホストは売れているホストだけです。

「掃除組」を経験したホストの意見

売上が少ないが故に雑用をさせられているので「掃除組」については否定的な意見が多いですが、業界にはややポジティブにとらえている人もいます。

Tik Tokで約8000人のフォロワーを有する「ホスト日記の人」のつんつんさんは、Twitterで「掃除を通して小さいところに目を配り、女の子にも気遣いができるようになる」と投稿しています。

掃除から「気遣い」を学ぶことができると考えるホストの一人です。

一方で仙台市国分町のホストクラブ「Break」の副主任をされているリシャール柊(ひいらぎ)さんは自身のブログで「誰でもできる作業は誰よりもできなければ大きな仕事を任せられない」と言っています。

このようにホストの仕事も掃除ができる上で利益を残せるように考えて立ち振る舞うことが必要だと考えている幹部もいます。

参考情報:リシャール柊のホスホスブログ「ホストクラブにはなぜ『掃除組』が存在するのか」

「掃除組」がいないお店もある

最近は店内の掃除することに時間を使うより、1人でも多くのお客様をお店に呼べるように努力する方が良いと考えるホストクラブが増えています。

それらのお店では掃除は専門業者に委託しています。

求人のPRポイントとして「掃除なし」を記載するお店もあり、求人サイトでそのお店をカテゴリ検索できることも増えています。

参考情報:掃除なしのホスト求人

まとめ:掃除組は「成功への助走期間」

もし入店したお店に掃除組の制度があったとしても、それをネガティブに捉える必要はありません。それはあなたが「ただのイケメン」から「気配りのできる一流のホスト」へと進化するための、またとない助走期間だからです。

目の前のグラス一つをピカピカにすることから、あなたのNo.1への道は始まっているのです。

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